ごはん粒。



ふぶ鬼も、よく懐いている。


父子家庭で寂しい思いをさせていたが、
駄目もとで家庭教師を頼んで良かった…



そう思った。




自分より年下だが随分と有能な彼は、
本来ならば敵対する立場だ。

けれど、事情を話すとそれを承知で
我が家に来てくれるようになった。




特に今夜のような、
三人で囲炉裏を囲んで食事をする夜は
まるで妻がいたあの頃のように温かく、賑やかで。


父親らしいところを見せようと、
「こら、ふぶ鬼。ごはん粒ついてるじゃないか。」
なんて威厳をこめて注意して見せるが。

「えっ」
「全くお前という奴は…だらしないぞ!」
「…そういう風鬼さんもついてますけど、ごはん粒。」
「え"…っ/////」


そおっと頬に手を伸ばされると、ドキリと跳ねる心臓。

「しかたない人…」

柔らかそうな桜色の口唇が、ゆるく弧を描き微笑む。

「…!!!」




ああ!


なんてこった!



この年になって恋に落ちるとは…!














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